あねえ。
助十 手前のやうな判らずやは猿にも劣つてゐるのだ。
權三 まあ、いゝと云ふことよ。兄弟喧嘩ぢやあ、どつちから膏藥代《かうやくだい》を取るわけにも行かねえ。つまり毆られ損だ。止せ、止せ。
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(上のかたより家主六郎兵衞出づ。)
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六郎 これ、これ、みんな何をしてゐるのだ。もう些《ちつ》とだから怠けてはいけない。(上のかたに向つて團扇をあげる。)さあ、さあ、早く引いた、引いた。
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(上のかたより雲哲、願哲をはじめ長屋の人々は綱を持ちて出で來り、再び上のかたへ引返してゆく。)
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六郎 助八。おまへはこの忙がしい最中に猿にからかつて騷いでゐたさうだな。
助八 なに、こつちが猿にからかはれたので……。
六郎 まあ、なんでもいゝから早く行つて、手傳へ、手傳へ。貴樣は長屋で一枚看板の馬鹿野郎だ。
助八 あい、あい。大屋さんに逢つちやあかなはねえ。
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