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(助八は叱られて、これも早々に上のかたへゆく。)
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おかん 大屋さん。今日はお暑いのに御苦勞樣でございます。
權三 まあ、まあ、こゝへお掛けなせえ。
六郎 (權三を見て。)おゝ、お前はさつきから井戸端へ些とも顏を見せなかつたやうだな。
權三 (ぎよつとして。)え。實は其、すこし用がありまして……。
おかん 早くあやまつておしまひよ。(眼で知らせる。)
權三 まつたく據《よんどころ》ない用がありまして……。
六郎 よんどころない用があつた……。
權三 へえ、急病人が出來まして……。
助十 いや、こいつ呆れた奴だ。もし、大屋さん。だまされちやあいけねえ。そんなことは皆んな嘘ですよ。
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(夫婦はあわてて手をふる。)
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助十 (いよ/\呶鳴る。)えゝ、嘘だ、嘘だ。大うその川獺《かはうそ》だ。奧に樂々と晝寢をしてゐやあがつて、おれが幾度催促に來ても出て來なかつたぢやあねえか
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