て/\不養生なお人だ。兎もかくもお見舞申さう。(内に入る)
おきよ (屏風の外にて)お醫者樣がおいでなされました。
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(半二はだまつてゐる。)
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おきよ もし、お醫者樣のお見舞でござります。
半二 (うるささうに)今はすこし忙がしいところだ。又お出で下さいと云つてくれ。
醫者 はゝ、相變らず我儘な病人だ。(おきよに)まあ、屏風をあけなさい。
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(おきよは屏風をあけると、近松半二、五十九歳、寢床の上に坐りて机にむかひ、病中ながら淨瑠璃をかきつゞけてゐる。)
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醫者 あいにくお天氣はすこし曇つたが、陽氣は大分春めいて來ましたな。
半二 (よんどころなく筆を措《お》く)二月ももう末になりましたから一日増しに春めいて來るやうです。
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(おきよは奧に入る。)
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醫者 今年はいつもよりも餘寒が長かつたから、急に又、暖かになるか
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