き、折り返して1字下げ]
半二 この通りの狹いところへ病人が寢てゐるのだ。まあ、我慢して坐つてください。
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(三人は會釋して坐る。)
[#ここで字下げ終わり]
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半二 染太夫さん。今もおまへの噂をしてゐた所だ。
染太夫 (笑ひながら)噂は善い方か、惡い方かな。
庄吉 大かた獅子《しし》身中《しんちゆう》の蟲とでも云はれたのでござりませう。
染太夫 やかましい。だまつてゐなさい。
半二 なに、いつかの「妹脊山」の雛の話をしてゐたのだ。(違ひ棚を指さす)あれ、あの人形の昔話さ。
染太夫 (うなづく)ほんにあの人形がまだ飾つてある。考へると昔のことだな。
吉治 そこで、御病氣は……。大阪でもみな案じて居りますが……。
庄吉 座元がお見舞ながら伺はなければならないのでござりますが、正月の芝居のあと始末がまだごた/\して居りますのでこの力彌《りきや》めが名代に參上いたしました。(形を改めて)座元からもくれぐれも宜しくと申しました。これは疎末ながらお見舞のおしるしでござります。(供の若者に指圖して、菓子の折を持ち出す)おめづらしくも
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