そりゃお身さま御自身のことじゃ。わたくしのような端下者《はしたもの》が何でそのような……。現在の証拠はお身さまこそ、さっきから人待ち顔にここに忍んでござるでないか」
 今度は別に言い訳をしようともしないで、兼輔は唯にやにやと笑っていた。実をいうと、彼もそういう心構えがないでもない。自分ほどの者がまどいを離れて、こうして一人でさまよっているからには、誰か慕い寄って来る女があるに相違ないと、誰をあてともなしに待ち網を張っているところへ、思いのほかの美しい人魚が近寄って来たのであった。彼はどうしてこの獲物を押さえようかとひそかに工夫を練っていた。
「うたがいも人にこそよれ、兼輔はさような浮かれた魂を抱えた男でござらぬ。そういうお身はなにしにここへ参られた。われらこそここにおってはお邪魔であろうに……。ほんにそうじゃ。お身が先刻あちらの亭へゆけと言われたは、その謎か。それを悟らで、うかうかと長居したは、われらの不粋《ぶすい》じゃ。ゆるしてくだされ」
 相手の心をさぐるつもりであろう。彼は笑いにまぎらせて徐《しず》かにここを立ち去ろうとすると、その袂はいつか白い手につかまれていた。
「お身さま、
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