し名を立てられるのを、ひとにも羨《うらや》まれ、彼自身も誇らしく考えていた。
その風流男の前に立って恥じらう風情もなしに心易げに物をいう女子《おなご》は、人間の色も恋もとうに忘れ果てた古《ふる》女房か、但しは色も風情も彼に劣らぬという自信をもった風流乙女《みやびおとめ》か、二つのうちの一つでなければならなかった。彼と向き合っている女子は確かに後の方の資格を完全にそなえていた。
「なんの御会釈《ごえしゃく》に及びましょう。おんもてなしはわたくしどもの役目、何事も不行届きで申し訳がござりませぬ。この頃の春の日の暮るるにはまだ間《ひま》もござりましょう。あちらの亭《ちん》へお越しなされて、今すこし杯をお過ごしなされてはいかが。わたくし御案内を仕まつります」
「いや、折角ながら杯はもう御免くだされ。先刻からいこう酔いくずれて、みだりがましい姿を人びとに見せまいと、この木蔭《こかげ》まで逃げてまいったほどじゃ」と、兼輔は扇を額《ひたい》にかざしながらほほえんだ。
「と申さるるは嘘で、誰やらとここで出逢う約束と見えました。そういうことなら、わたくし何時《いつ》までもここにいて、お前がたの邪魔しま
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