うな」
 あしたはもう一度たずねて行って、今度はなんといって口説き伏せようかと、彼は疲れ切った神経をいよいよ尖らせて、秋の夜長をもだえ明かした。あかつきの鶏の啼く頃から彼は又もや熱がたかくなった。
「それお見やれ。しかと癒り切らぬ間《ま》にうかうかと夜歩きをするからじゃ」と、彼は叔母から又叱られた。叔父からも命知らずめと叱られた。
 そうして、四日ばかりは外出を厳しく戒められた。
 いかにあせっても、千枝松は動くことが出来なかった。四日目の朝には気分が少し快くなったので、叔母が買物に出た留守を狙って、彼は竹の杖にすがって家を這い出した。三、四日のうちに今年の秋も急に老《ふ》けて、畑の蜀黍《もろこし》もみな刈り取られてしまったので、そこらの野づらが果てしもなく遠く見渡された。千枝松は世界が俄に広くなったように思った。そうして、晴ればれしいというよりも、なんだか頼りないような悲しい思いに涙ぐまれた。彼は重い草履を引きずってとぼとぼと歩いて来た。
 藻の門《かど》の柿の梢がようように眼にはいったと思う頃に、彼は陶器師の翁に逢った。翁は野菊の枝を手に持って、寂しそうに俯《うつ》向き勝ちに歩いて
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