れじゃ。見事じゃ。ひとり寝の別れという難題をこれ程に詠みいだす者は、都はおろか、日本じゅうにもあるまい。まことによう仕《つか》まつった。奇特のことじゃ。関白殿下にも定めて御満足であろう。世は末世《まっせ》となっても、敷島の道はまだ衰えぬかと思うと、われらも嬉しい」
 師道は幾たびか繰り返してその歌を読んだ。文字のあともあざやかであった。かれは感に堪えてしばらくは涙ぐんでいた。それにつけても彼はこの才女の身の上を知りたかった。
「今も聞く通りじゃ。これほどの歌は又とあるまい。すぐに関白殿下に御披露申さねばならぬが、さてその時にこの詠みびとは何者じゃと問われたら、わしは何と申してよかろう。もうこの上は隠すにも及ぶまい。いずこの誰の子か、正直に明かしてくりゃれ」
「どうでも申さねばなりませぬか」と、藻は思い煩らうように言った。「身分の御詮議《ごせんぎ》がむずかしゅうござりまするなら、詠みびと知らずとなされて下さりませ」
「それもそうじゃが、なぜ親の名をいわれぬかのう」
「申し上げられませぬ。わたくしはこれでお暇《いとま》申し上げまする」
 言い切って、藻はしとやかに座を起《た》った。その凛と
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