原にたどり着いたときに、彼は陸奥から帰る金売りの商人《あきうど》に遇って那須野の怪しい物語を聞かされたのであった。しかし彼の心はその奇怪に驚かされるよりも、むしろ一種の心強い感じに支配されていた。玉藻はむなしくほろび失せても、その魂は石に宿って生けるように残っている。それが事実である以上、彼は果てしも知れない那須野ケ原にさまよって、そことも分からない玉藻の死に場所をあさり歩くには及ばない。彼女の魂のありかは確かにそこと見きわめられたのである。千枝太郎はわざわざたずねて来た甲斐があったように嬉しく感じた。
「いろいろのお心添え、かたじけのうござった」
彼はここで都へ帰る商人にわかれた。そうして再び北へむかって急いで行った。それから幾日の後に野州の土を踏んで、土地の人にきいてみると、殺生石のうわさは嘘でなかった。彼はわざと真夜中を選んで、那須野の奥へ忍んで行った。
十一月なかばの夜も更けて、見果てもない那須の篠原には雪のように深い霜がおりていた。物凄いほど高く冴え渡った冬の月が、その霜に埋められた枯れすすきを無数の折れた剣《つるぎ》のようにきらめかせているばかりで、そこには鳥の啼く声も
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