面《はくめん》金毛《きんもう》九尾《きゅうび》の狐が那須の篠原《しのはら》にあらわれて、往来の旅びとを取り啖《くら》うは勿論、あたりの在家《ざいけ》をおびやかして見あたり次第に人畜を屠《ほふ》り尽くすので、宗重は早速に自分の人数を駆りあつめて幾たびか狐狩りを催したが、神通自在の妖獣はここに隠れかしこに現われて、どうしても彼らの手には負えないので、結局それを上聞《じょうぶん》に達するというのであった。頼長はすぐに泰親を召して占わせると、その金毛九尾の妖獣はまさしく玉藻の姿であることが判った。玉藻は東国へ飛び去って、那須野《なすの》ケ原をその隠れ家としているのであった。
「おそらく宗重一人の力では及び申すまい。それがしは都にあって再び調伏をこころみ申す間、源平両家の武士のうちより然るべき者どもを東国へ下され、宗重に力をあわせて悪獣退治のおん計らい然るびょう存じまする」と、泰親は申し上げた。
玉藻の正体があらわれてから、関白忠通は世間に面目を失った。大納言師道も病気と申し立てて官職を辞した。殊に忠通は魔性の者にたぶらかされて、彼女を采女に申し勧めたのであるから、その責任はいよいよ重大であっ
前へ
次へ
全285ページ中273ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング