た。彼も関白の職を去って桂の里の山荘に引き籠ることになった。
 したがって当時の殿上は頼長の支配である。頼長は泰親の意見を容《い》れて、源平両家の武士のうちから然るべきものをすぐり出そうとしていると、それを洩れ聞いて、第一に願い出たのは三浦介義明であった。
 三浦は東国の生まれである。老年ではあるが、弓矢のわざにも長《た》けている。殊に彼は最愛の孫娘を悪魔の手に奪われている。それらの事情をかんがえて、殿上の議論も彼を選むことに一致した。頼長は彼一人に命ずるつもりであったが、源平両家がならび立っている以上、源氏の三浦に対して平家からも相当の武士一人を選み出さなければ権衡をうしなうという議論が勝ちを占めて、平家からは上総介広常を選むことになった。広常はまだ二十九歳で、これも東国の生まれであった。
 三浦、上総の両介はすぐに支度を整えて東国に走《は》せ下った。泰親はかさねて屋敷のうちに調伏の壇をしつらえた。泰忠その他の弟子たちも壇にのぼる人になった。千枝太郎も無論その一人に加えられたが、彼は不思議に魂がゆるんで、どうしても今までのような張り詰めた気分になれなかった。彼は日々のおごそかな祈祷に
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