つ》も一度に打ち消されたかと思うと、玉藻の苦しみ悶《もだ》えている身のうちから怪しい光りがほとばしって輝いた。それは花の宴《うたげ》の夕にみせられた不思議とちっとも変わらなかった。その光りのなかに玉藻はすくっと起ち上がった。おどろに乱れた髪のあいだから現われた彼女の顔の悽愴《ものすご》さ――忠通は思わずぞっとして眼を伏せると、彼女はしなやかな肩に大きい波を打たせて、燃えるようなほの白い息を吐きながら、あたりを凄まじく睨《ね》めまわして縁さきへよろよろとよろめき出た。筑紫育ちの熊武はまさしく彼女を魔性の者と見て、猶予なく鉞を取り直して縁のあがり段に片足踏みかけると、その一刹那である。彼を盲にするような強い稲妻が颯《さっ》とひらめいて来て、彼のすがたは鷲に掴まれた温《ぬく》め鳥のように宙に高く引き挙げられた。
 世はむかしの常闇《とこやみ》にかえったかと思われるばかりに真っ暗になって、大地は霹靂《はたたがみ》に撃たれたようにめりめりと震動した。忠通も眼がくらんで俯伏した。女たちは息が詰まって気を失った。侍どもも顔を掩って地に伏していると、黒い雲の上から庭さきへ真っ逆さまに投げ落とされたのは
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