にうずくまったのが眼に立った。
「すさまじい夜のさまじゃ、警固怠るな」と、忠通は言った。
女たちは身を固くしてひとつ所に寄りこぞって、誰も声を出す者はなかった。それをおびやかす稲妻がまた走って、座敷の燈火《ともしび》を奪うようにあたりを明るくさせた。と思うと、言い知れない一種の怪しい匂い、たとえば女の黒髪を燃やしたような怪しい匂いが、どこからともなしに湧き出して、無言の人びとの鼻に沁みた。
「あ、玉藻の御《ご》は……」と、熊武は床の下から伸び上がって叫んだ。
玉藻は毒薬を飲んだように身を顫《ふる》わせているのであった。彼女の長い髪は幾千匹のくちなわが怒ったように逆立《さかだ》って乱れ狂っていた。忠通もおどろいて声をかけた。
「玉藻。さのみ恐るるな。予もこれにおる。強力の者どももそこらに控えているぞ」
彼女はなんとも答えなかった。いや、答えることが出来ないのかもしれなかった。彼女は骨も肉も焼けただれていくかとばかりに、さも苦しげに身をもがいて、再び顔をもたげようともしなかった。
「玉藻、玉藻」と、忠通はまた叫んだ。
夜嵐が又どっと吹きおろして来て、座敷の燈火も侍どもの松明《たいま
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