く窺っていた。
「ほう、やがて夜嵐でも吹き出しそうな。この春の花の宴《うたげ》のゆうべにも、このような怪しい空の色を見たよ」
彼の予言は外《はず》れなかった。弱い稲妻が彼の直衣《のうし》の袂を青白く染めて走ったかと思うと、庭じゅうの草や木を一度にゆすって、おびただしい嵐がどっと吹き巻いて来た。大きい屋形は地震《ないふる》ようにぐらぐらと揺れるので、忠通は危うく倒れかかって玉藻の手をとった。
「物怪《もののけ》の仕業であろうも知れぬ。端《はし》近う出ていて過失《あやまち》すな」
引き立てられて、玉藻はよろめきながら元の座に戻った。しかも彼女は何物をか恐れるように、蒼ざめた顔を両袖に埋めてそこに俯伏してしまった。夜嵐はひとしきりでやんだらしい。それでも暗い空はいよいよ落ちかかって来て、なにかの怪異《あやかし》がこの屋形の棟の上に襲って来るかとも怪しまれた。
「侍やある。早うまいれ」と、忠通は高い声で呼び立てた。
宿直《とのい》の侍どもは庭伝いにばらばらと駈けあつまって来た。そのなかでも近ごろ筑紫から召しのぼされた熊武という強力《ごうりき》の侍が、大きい鉞《まさかり》を掻い込んで庭さき
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