明も木蘭地《もくらんじ》の直垂《ひたたれ》に紺糸の下腹巻をして、中黒藤《なかぐろとう》の弓を持って控えていた。三浦の党は上洛以来きょうが初めての勤めであるので、彼も家来どもも勇気が満ちていた。千枝太郎に折らせた新しい烏帽子の緒を固く引きしめて、小源二も大きい長巻《ながまき》を引きそばめていた。
この物々しい警固のなかを分けて、泰親の群れは昼でも薄暗い森の奥へはいった。邪魔になる立ち木は武士どもに伐り倒されて、そこには祈祷の壇が築かれた。陰った秋の空は低くたれて、森には鳥一羽の鳴く声もきこえなかった。
壇に登ったのは河原の祈祷とおなじように四人であった。彼らはやはり五色《ごしき》に象《かたど》った浄衣《じょうえ》をつけていた。泰親の姿は白かった。落葉に埋められた円い古塚を前にして、祈祷は午《うま》の刻(正午十二時)から始められたが、それが息もつかずに夜まで続いたので、そこらには篝火《かがりび》が焚かれた。木の間へ忍び込む夜風にその火がゆれなびいて、五色の影を時どきに暗く隠すかと思うと、又明かるく浮き出させるのも物凄かった。警固の人びとも草も木も息をひそめて、このすさまじい祈祷の結果を
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