案じらるるほどじゃ。我らとても同様の苦労、察しておくりゃれ」と、泰忠は蒼ざめた唇をゆがめながら言った。
「そりゃ容易ならぬことじゃ」と、千枝太郎もはらわたから絞り出すような溜息をついた。「それに就いてわしも思い当たることがある。子細はこうじゃ」
 彼は兄弟子の耳に口をよせて、かの古塚のことや三浦の屋敷のことをささやくと、泰忠は眼をみはりながら聴いていた。
「むむ、よいことを教えてくれた。三浦のことはお師匠さまもわれわれも承知じゃが、古塚の怪異《あやかし》はまだ聞かぬ。よい、よい、きっとお師匠さまに申し上ぐる。お身もこれを功に御勘当が赦《ゆる》さりょうも知れぬ。この上にも心をつけて働いておくりゃれ。頼んだぞ」
 兄弟子から鋭《するど》く励まされて、千枝太郎のしおれた魂も俄に勇んだ。彼はきっとその怪異を探り出すことを泰忠に誓って別れた。彼はもう悠々と京の町などをうろついてはいられないので、山科の家へ急いで帰った。
「きょうもくたびれ儲けか」と、なんにも知らない叔母は笑っていた。「したが、そのうちにはおのずとなりわいの道も覚えて来る。必ず倦きてはならぬぞよ」
 気のよい叔母は彼の不働きを責め
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