ら正式に玉藻を采女に推薦した。それに対して、頼長は相変わらず強硬に反対したが、忠通は頑として肯《き》かなかった。何分にもこの前とは違って玉藻は雨乞いの奇特《きどく》を世に示して、その名はもう雲の上までも聞こえている。相手にはそういう強味がある上に、頼長が唯一《ゆいいつ》の味方と頼む信西入道がなぜか今度は不得要領で、木にも付かず草にも付かぬというあいまいの態度を取っているので、味方はいよいよ影が薄い。蔭では兄の文弱を日ごろ罵り卑しめている頼長も、さすがに殿上で顔を向き合わせては、有る甲斐なしに兄を言い破るわけにもいかない。もうひとつには、玉藻の三井寺詣でを待ち受けて、遠矢に掛けようとした事も忠通に知られている。そういう事情がいろいろからんでいるので、彼は肚《はら》の中では苛《いら》いらしながらも、正面の論戦ではどうも思うように闘うことが出来ない。かたがた殿上の形勢は相手方の勝利にかたむいて、玉藻はいよいよ采女に召さるることに決まるらしいと、泰忠は残念そうに話した。
「もうこの上はお師匠さまの力一つじゃと、左大臣どのも仰せらるる。お師匠さまも昼夜の祈祷に、やがて精も根も尽き果てらりょうかと
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