千枝太郎は驚かされたように再びその顔をじっと見あげると、この衣笠という娘の顔かたちが玉藻によく似ているとはいうものの、その艶色におのずから相違が見いだされた。玉藻は妖麗《ようれい》であった。衣笠は端麗《たんれい》であった。千枝太郎はこの相違を比較して考えた。そうして、今までは玉藻のほかに殆んど女というものに眼をくれたことがなかった彼の若い魂が、眼に見えない糸にひかれて衣笠の方へだんだん吸い寄せられて行った。
「いろいろの話を聴いて面白かった。あすも又来やれ」と、侍女どもは言った。
「あすもまた御機嫌伺いにあがりまする」
一※[#「※」は「日へんに向」、読みは「とき」、205−1]《いっとき》ほどの後に千枝太郎は暇乞いをして帰った。それから京の町をひとめぐりしたが、きょうも都の人はちっとも彼に商売《あきない》をさせてくれなかった。それでも三浦の屋敷で幾らかの仕事をしたのに満足して、彼は軽い心持で山科へ戻った。
あくる日も早く起きて、千枝太郎は京へ行った。そうして、真っ直ぐに三浦の屋敷をたずねると、彼は小源二から意外の話を聞かされた。衣笠はゆうべ物怪《もののけ》に襲われたというのであっ
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