《さんもん》と三井寺とは年来の確執じゃ。その三井寺に参詣して法師ばらを唆《そその》かし、世の乱れを起こそうとてか」と、頼長は何事も見透かしたようにあざ笑った。「さりながらこれは大事じゃ。山門の荒法師も手をつかねて観てもいるまい。又しても山門と三井寺の闘諍《とうじょう》、思えば思えば浅ましさの極みじゃ」
 叡山《えいざん》と三井寺の不和は多年の宿題で、戒壇建立の争いのためには三井寺の頼豪阿闍梨《らいごうあじゃり》が憤死して、その悪霊が鼠になったとさえ伝えられている。その三井寺へ魔女の玉藻が参詣して、いかなる禍いの種を播《ま》こうとするのか。
 しょせんは三井寺の僧徒を煽動して叡山に敵対させ、かれらを執念く啖《く》い合わせて、仏法の乱れ、あわせて王法の乱れを惹き起こす巧みであろう。こう思うと、信西の嶮しい眉も食い入るばかりに顰《ひそ》んできた。
「彼女《かれ》の悪業、いやが上に募ってまいっては、いよいよ油断がなり申さぬ」
「そうじゃ。まだこの上に何事をたくもうも知れぬ」と、頼長も奴袴《ぬばかま》の膝を強く掴んだ。「のう、入道。この上は重ねて七十日の祈祷《いのり》などおめおめと待ってはいられ
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