まい。泰親にもその旨を申し含めて、早急にかれめを祈り伏する手だてが肝要であろうぞ」
この点に就いては、信西も勿論、同意であった。
「仰せごもっとも、それがしも肝胆を砕いて、一日も早く妖魔をほろぼす手だてを案じ申そうよ」
二
八月十一日は晴れていた。それでも先日の大雨以来、明るい日の色も俄に秋らしくなって、藍《あい》を浮かべたような湖《みずうみ》の上を吹き渡って来る昼の風も、たもと涼しくなった。
青糸毛《あおいとげ》の牛車《くるま》が三井寺の門前にしずかに停まると、それより先きに紫糸毛の牛車が繋がれていた。あとから来た青糸毛のうしろに、黒塗りの鷺足の榻《しい》が据えられて、うしろ簾《すだれ》がさやさやと巻きあげられると、内から玉藻の白い顔があらわれた。折りからそよそよと吹いて来る秋風に袴の緋を軽くなびかせて、彼女は牛車からしなやかに降り立つと、門前にたたずんでいた一人の侍がつかつかと歩み寄って来た。侍は藤内兵衛遠光であった。
「お身は三井寺御参詣か」と、遠光は会釈しながら訊いた。
玉藻の供の侍には遠光を見識っている者どももあった。関白家御代参として玉藻が参詣を彼らが答
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