思うて、わしもこれまでいろいろに丹精してみたが、お身は執念《しゅうね》く怪異《あやかし》に憑《つ》かれている。お身のおもてに現われた死相はどうでも離れぬ。こう言うと、おのれの罪をひとにまぶし付くるようで甚だ心苦しいことではあるが、泰親が今度の祈祷を仕損じたも、五色にかたどった五人のうちにお身をまじえた為ではないかと疑わるる節《ふし》もある。かたがた、いつまでもここにおっては、泰親のためにもようない。お身のためには殊にようない。いったんは叔父のもとへ立ち戻って昔の烏帽子折りになって見やれ。そうして、つつがなく一年二年を送って、その禍いが去ったとみえたらば、再びもとの弟子師匠じゃ。憎うて勘当するのではない。しょせんはお身が可愛いからじゃ。むごい師匠と恨むまいぞ」
 噛んでふくめるように言い聞かせて、泰親は幾らかの金をつつんで呉れた。千枝太郎はただ夢のようで、なんと言い返してよいかを知らなかった。彼はおのずと涙ぐまれた。


烏帽子折《えぼしおり》

    一

「おとといのこと、頼長も近頃心外に存じ申すよ。泰親が一生に一度の祈祷《いのり》、よも仕損じはあるまいと頼もしゅう存じておったに、
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