前のお師匠さまは遅かれ速《はや》かれ破滅の身の上じゃ。宇治の左大臣殿がいかほど贔屓《ひいき》せられても、理を非にまぐることは出来ない。そのまきぞえを受けぬように能《よ》く心しなされ」
 関白の屋形の門前で二人は別れた。千枝太郎が師匠の家へ戻り着いた頃には、夜もよほど更けていた。泰親はまだ眠らずに待っていたので、千枝太郎はすぐに師匠の前へ出て、今夜の使いの結果を報告すると、泰親は笑《え》ましげにうなずいた。
「少納言の御芳志は海山《うみやま》じゃ。泰親もよみがえったような心地がする。お身も大事の使いを果たしてくれて、いこう大儀であった」
 こう言ううちに、泰親の眉がだんだん陰ってきたのを、若い弟子はちっとも気がつかなかった。彼は師匠に褒められたのを誇りとして、自分の部屋へしずかに引き退がった。玉藻に就いて考えたいことがたくさんあったが、今夜の彼はあまりに疲れていたので、枕に就くとすぐに安らかに眠ってしまった。
 しかしその安らかな夢がさめると、彼は不意の落雷に驚かされたのである。夜があけると、彼は師匠の前に呼び出されて、突然に破門《はもん》を申し渡された。
「行く末の見込みある若者じゃと
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