あの通りの体《てい》たらく……いや、さんざんじゃ」
堪えぬ憤りの声に失望の溜息をまぜて、頼長は自分と向かい合っている信西入道のおちつき顔を睨むように見つめた。信西はゆうべ泰親の使いの口上を受け取って、けさは早朝から宇治の左大臣頼長をたずねたのである。泰親がおとといの失敗に対して、頼長の怒りのおびただしいことは信西も大方推量していたが、その気色《けしき》の想像以上にすさまじいのを見て、彼もさすがに少しく躊躇した。しかしそのままに口を結んでは帰られないので、彼は朽葉《くちば》色の直衣の袖をかきあわせながら徐《しず》かに言い出した。
「その儀に就きましては、泰親もいこう無念に存じて、いかようのお咎めを受きょうとも是非ないと申しております」
「勿論のことじゃ。彼めが家の職を剥《は》ぎとって、遠国《おんごく》へ流罪申し付きょうと思うている。泰親にもそれほどの覚悟はあろう。たとい頼長が捨て置いても、兄の関白殿が免《ゆる》さりょう筈がない。まして兄のそばには、かの玉藻が付いている。しょせんは逃れぬ彼の運じゃ」と、頼長は罵るように言った。
「実は昨夜、泰親の使いとして、弟子の一人がそれがしの許《もと
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