跳《おど》った。彼はまず路ばたの小石を拾って真っ先に進んでいる犬の二、三匹を目がけてばらばらと打ち付けながら、つかつかと駈け寄って女を囲った。それでも犬はなかなか怯《ひる》まないらしく、一、二間さがったままでまだ執念ぶかく吠えつづけているので、千枝太郎もじれた。しかし彼も扇のほかに何物をも持っていないので、そこらに転がっている小石や、土くれのたぐいを手あたり次第に拾って投げた。手近へ飛びかかって来る敵を扇で打ち払った。
犬の声があまりに激しいので、宵寝の都人《みやこびと》も夢をおどろかされたらしい。路ばたの小さい商人店《あきうどみせ》では細目に戸をあけた。それが盗賊でない、犬のいたずらであると知ったときに、そこらの家から二、三人の男が棒切れを持って出て来た。彼らは千枝太郎に加勢して、むらがる犬どもを叩きのけてくれた。敵がだんだんに多くなったので、犬もとうとう追い散らされてしまった。
「かたじけのうござる」
千枝太郎は加勢の人たちに礼をいって、自分の囲っている女を見かえると、女はいつか自分のうしろを離れて、ある家の軒下の暗いかげに身を寄せていた。千枝太郎は彼女に声をかけた。
「さぞ怖
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