。彼はもとより師匠を信じていた。しかも玉藻のいう通り、彼女が果たして魔性の者であるならば、日本一というお師匠さまが七十日の間も肝胆を砕いた必死の祈祷に、その正体をあらわさぬということはあるまい。彼女は恐るる色もなしに調伏の壇に登ったのである。それを悪魔の勝利と見るのが正しいのであろうか。あるいは悪魔でもない者を悪魔として無益の祈祷をつづけていたこちらの眼違いであろうか。こう思うと、彼の胸は急に暗闇《くらやみ》になった。彼は自分の抱えている女を、どう処置していいか判らなくなってきた。
「お前はまだわたしを疑うているのか。いや、お前ばかりでなく、お師匠さまもきっとわたしを疑うているに相違あるまい。播磨守殿は情のこわい人と聞く。おそらくこれには懲りもせで、二度の祈祷など巧《たく》まるることであろう。二度が三度でもわたしは厭わぬが、そのような罪をかさねて、身の行く末は何となることやら、思いやるだに悼ましい。お師匠さまが大事じゃと思うなら、お前からよく意見して、もうさっぱりと思い切らせてはどうであろう。それともお前までがいつまでもお師匠さまの味方して、わたしを悪魔と呪う気か」
玉藻は男の腕に手
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