であるから、表向きはどうしても彼の負けである。安倍晴明六代の孫は祖先を恥ずかしめたのである。彼は謹《つつし》んで罪を待つよりほかはなかった。弟子も無論に師匠と共に謹慎していた。泰親は自分の居間に閉じ籠ったままで、誰とも口をきかなかった。
その明くる日は晴れていたが、きのうの雨に洗われた大空は、俄に一里も高くなって、その高い空から秋らしい風がそよそよと吹きおろしてきた。縁に近い梧《きり》の葉が一、二枚、音もなしに寂しく落ちるのを、泰親はじっと眺めていると、千枝太郎はぬき足をして燈台をそっと運んで来た。きょうももういつの間にか暮れかかっていた。
「千枝太郎、きょうは朝から誰も見えぬか」
「誰も見えませぬ」
「関白殿よりお使いもないか」
「はい」
千枝太郎は伏し目になって師匠の顔色をうかがうと、燈台の灯に照らされた泰親の顔は水のように蒼かった。
「大切の祈祷を仕損じた泰親じゃ。重ければ流罪《るざい》、軽くとも家《いえ》の職を奪わるる。その御沙汰がきょうにもあるべき筈じゃに、今になんのお使いもないは……」と、泰親は頭《かしら》をかたむけた。「人は何ともいえ、雨乞いの勝ち負けなど論にも及ばぬ
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