大雨は天《あま》の河《かわ》を切って落としたようにどっと降ってきた。

    二

 甘露《かんろ》のような雨はその夜のふけるまで降り通したので、天の恵みをよろこぶ声ごえは洛中洛外に溢れた。彼らは天の恵みを感謝すると共に、玉藻の徳の宏大無量を讃美した。彼らばかりではない。忠通は小おどりして喜んだ。
「見い、あいつら。これほどの奇特を見せられても、まだまだ玉藻を敵とするか。この忠通を侮るか。はは、小気味のよいことじゃ」
 実際、これに対して玉藻の敵も息をひそめないわけにはいかなかった。頼長も信西もなんとも声を立てることが出来なくなった。とりわけ面目を失ったのは泰親である。彼は公《おおやけ》の沙汰を待たないで、自分から門を閉じて蟄居《ちっきょ》した。
 泰親はもともと雨を祈ったのではない。したがって玉藻との祈祷くらべに不覚を取ったというのではないが、悪魔調伏は秘密の法で、表向きは雨乞いの祈祷である以上、泰親が半日の祈祷にはなんの効験《しるし》もなかったのに、それに入れ代った玉藻は一※[#「※」は「日へんに向」、読みは「とき」、163−16]《いっとき》の後にあれほどの大雨を呼び起こしたの
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