して、頼長でも信西でももう故障をいう余地はない。玉藻も立ちどころに殿上に召されて、やがては予定の通りに頼長や信西の一派を蹴落とすことも出来る。こう思うと、忠通の弱った魂はよみがえったように活気づいて、彼は俄に起き直った。
「おお、殊勝な願いじゃ。忠通が許す。早くその祈祷《いのり》をはじめい」
「では、一七日《いちしちにち》のあいだ身を浄めまして、加茂の河原に壇を築かせ、雨乞いの祈祷を試みまする」
玉藻が雨乞いの祈祷は関白家から触れ出された。その式はなるべく壮厳《そうごん》を旨として、堂上堂下の者どもすべて参列せよとのことであった。雑人《ぞうにん》どもの争擾《そうじょう》を防ぐために、衛府の侍は申すにおよばず、源平の武士もことごとく河原をいましめと言い渡された。その日は八月八日と定められた。
「ほう、さりとは不思議。あたかも七十日の満願の当日じゃ」と、泰親はうなずいた。
彼はすぐに信西入道のもとへ使いを走らせて、自分たちも当日は河原へ出て祈りたいと言った。眼《ま》のあたりに魔性の者を祈り伏せるには、願うてもなき好機会であると彼は思った。
信西も同意であった。彼は頼長と打ちあわせて、
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