仰いで、関白忠通は唸るような溜息をついた。さらでも病み疲れている彼が、このごろの暑さに毎日さいなまれているのであるから、骨も肉も半分は溶けたようで、もう生きている心持はなかった。こうした嬲《なぶ》り殺しに逢うほどならば、いっそひと思いに死んだ方がましであるようにも思われた。まして彼の胸にはさまざまの不満や不快の種が充《み》ち満ちている。さりとて今となっては出家遁世して、自分の地位や権力を見すみす頼長に横領されるのも無念であった。
彼は今、玉藻がむいてくれた瓜《うり》の露をすこしばかりすすって、死にかかった蛇のように蒲莚《がまむしろ》の上に蜿《のた》打っていた。それを慰めるのは玉藻がいつもの優しい声であった。
「ほんに何というお暑さやら。天竺は知らず、日本にこのような夏があろうとは……。もう六十日あまりも降りませぬ」
「ここやかしこで雨乞いの祈祷《いのり》も、噂ばかりでなんの奇特《きどく》も見えぬ。世も末になったのう」と、忠通も力なげに再び溜息をついた。
「神ほとけに奇特がないと仰せられまするか」
「論より証拠じゃ。いかに祈ってもひと粒の雨さえ落ちぬわ」
「それは神ほとけに奇特が無いの
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