よって漲《みなぎ》り起こる妄想を打ち消そうとあせったが、それもこれも無駄であった。あせればあせるほど、彼の道心《どうしん》をとろかすような強い強い業火《ごうか》は胸いっぱいに燃え拡がって、玉藻のすがたは阿闍梨の眼先きを離れなかった。日ごろ嘲り笑っていた志賀寺《しがでら》の上人《しょうにん》の執着も、今や我が身の上となったかと思うと、阿闍梨はあまりの浅ましさと情けなさに涙がこぼれた。庭の上にも阿闍梨の涙とおなじような雨がほろほろと降ってきた。
彼は法衣《ころも》の袖に涙を払って、もう一度恐る恐るみあげると、如来のお顔はやはり美しい玉藻であった。一代の名僧の尊い魂はこうして無残にとろけていった。
三
「きょうはきついお世話でござりました」
法性寺の門を出ると、玉藻は兼輔に言った。兼輔もきょうの首尾を嬉しく思った。
「頑固《かたくな》な叔父御もお身に逢うてはかなわぬ。まして初めから魂のやわらかい我らじゃ。察しておくりゃれ」
彼は玉藻に肩をすり寄せて、女の髪の匂いを嗅《か》ぐように顔を差しのぞいてささやくと、玉藻は顔をすこし赤らめてほほえんだ。
「又そのようなことを言うてはお
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