つの間にか玉藻のあでやかなる笑顔と変わっていた。阿闍梨は物に憑《つ》かれたようにわなわなと顫《ふる》え出した。彼はもう堪まらなくなって、物狂おしいほどの大きい声で弟子の僧たちを呼びあつめた。
「すこし子細がある。お身たち一度に声をそろえて高らかに観音経を唱えてくりゃれ」
大勢の僧は行儀よく居並んだ。読経《どきょう》の高い声は一斉に起こった。数珠の音もさらさらと響いた。それに誘い出されて、阿闍梨も共に声を張り上げようとしたが、彼の舌はやはりもつれて自由に動かなかった。彼の胸は不思議に高い浪を打った。
「蝋燭を増せ。香を焚け」
彼は苦しい声を振り絞ってまた叫んだ。蝋燭の数は増されて、須弥壇《しゅみだん》はかがやくばかりに明るくなった。阿弥陀如来の尊像はくすぶるばかりの香りの煙りにつつまれた。その渦まく煙りのなかに浮き出している円満|具足《ぐそく》のおん顔容《かんばせ》は、やはり玉藻の笑顔であった。阿闍梨は数珠を投げすてて跳り上がりたいほどに苛《いら》いらしてきた。彼のひたいからは膏汗《あぶらあせ》がたらたら流れた。
「銅鑼《どら》を打て。鐃鉢《にょうばち》を鳴らせ」
いろいろの手段に
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