弄《なぶ》りなさるか。その日の風にまかせて、きょうは東へ、あすは西へ、大路《おおじ》の柳のように靡《なび》いてゆく、そのやわらかい魂が心もとない。なにがしの局《つぼね》、なにがしの姫君と、そこにも此処にも仇《あだ》し名を流してあるく浮かれ男《お》のお身さまと、末おぼつかない恋をして、わが身の果ては何となろうやら」
「なんの、なんの」と、男は小声に力をこめて言った。「むかしは昔、今は今じゃ。兼輔の恋人はもうお身ひとりと決めた。鴨川の水がさかさに流るる法もあれ、お身とわれらとは尽未来《じんみらい》じゃ」
「それが定《じょう》ならばどのように嬉しかろう。その嬉しさにつけても又一つの心がかりは、数ならぬわたくしゆえにお身さまに由《よし》ない禍いを着《き》しょうかと……」
「由ない禍い……。とはなんじゃ」
玉藻は黙ってうつむいていると、兼輔はやや得意らしく又訊いた。
「お身と恋すれば他《ひと》の妬《ねた》みを受くる……それは我らも覚悟の前じゃ。諸人に妬まるるほどで無うては恋の仕甲斐がないともいうものじゃ。妬まるるは兼輔の誉《ほま》れであろうよ。それがために禍いを受くるも本望……と我らはそれほど
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