って、扇で顔を掩いながら苛《いら》だった。
「燈火を……燈火を……。早うせい」
 この途端に座敷は月夜のように明るくなった。時ならぬ稲妻かと見ると、その光りはいつまでも消えなかった。忠通が倚りかかっている襖《ふすま》の絵も、そこらに取り散らしてある杯盤《はいばん》の数かずも、おどろいて眺めている人びとの衣の色も、皆あざやかに映し出された。
 闇を照らすこの不思議のひかりは、玉藻のからだからほとばしったのであった。彼女は後光《ごこう》を背負う仏陀のように、赫灼《かくしゃく》たる光明にあたりを輝かして立っていた。


法性寺《ほっしょうじ》

    一

「ふむう。頼長めが……。確《しか》と左様なことを申したか」
 関白忠通は二日酔いらしい蒼ざめたひたいの上に蒼い筋を太くうねらせて、扇を膝にきっと突き立てたままで、自分の眼の前に泣き伏している艶女《たおやめ》の訴えをじっと聞き済ましていた。花の宴《うたげ》のあくる日で、ゆうべから酔いこけた賓客《まろうど》たちも日の高い頃にだんだん退散して、あるじの軽いしわぶきも遠い亭まできこえるほどに、広い別荘のうちもひっそりと静まっていた。すさまじい夜
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