嵐の名残りで、庭は見渡すかぎり一面に白い花びらを散り敷いていた。
「神ほとけも見そなわせ、わたくし誓って偽りは申し上げませぬ」と、玉藻は涙ぐんだ美しい眼をあげて、主人の顔色をぬすむようにうかがった。
「日ごろから器量自慢の頼長めじゃ。それほどのこと言い兼ねまい」
忠通はわざと落ち着いた声で言った。しかもその語尾は抑え切れない憤恚《いかり》にふるえているのが、玉藻にはよく判っているらしかった。二人の話はしばらく途切れた。
忠通もゆうべはこの別荘に酔い伏して、賓客たちが大方退散した頃にようように重い頭を起こしたのであった。酔いのまだ醒めない彼は、玉藻の給仕で少しばかりの粥をすすって、香炉に匂いの高い香をたかせて、その匂いを快《こころよ》く嗅ぎながら再びうとうとと夢心地になろうとする時、彼は玉藻にその夢を揺すられて、思いも寄らない訴えを聞かされた。それは花の宴もたけなわなるきのうの夕方の出来事で、玉藻が川端に立って散り浮く花をながめていると、そこへ主人の弟の左大臣頼長が来た。彼は酔っているらしく見えなかったが、玉藻をとらえてざれごとを二つ三つ言った。相手は主人の弟で、殿上でも当時ならぶ方
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