んは強そうだね。おらあこの通り小さいから弱いのだ。
蟹 それだから早く大きくなれ。大きくなって強いものになれ。お前だって強くなれば、小さな蛇ぐらいはあべこべに呑んでしまうことができるのだ。おれも昔は弱いものであった。敵を見るとすぐ逃げて隠れたものだけれども、今はこんなに大きい強い者になったから、大抵の敵が来たって驚きはしない。こっち[#「こっち」は底本では「こつち」]から向って行って、鋏でチョン切ってしまうのだ。俺ばかりではない。どこの世界でも強いものが勝つのだ。
蛙 じゃあ、叔父さん、強い叔父さん。もしもここへ蛇が来たら、おまえ後生だから助けてくれないか。
蟹 よし、よし、俺がきっと救ってやるから、安心して遊んでいろ。おれはあの木のかげへ行って、甲羅《こうら》をほしながら午睡《ひるね》をしているから、なにか怖い者が来たら、すぐに俺をよべ。いいか。
蛙 おまえが加勢してくれれば安心だ。じゃあ、頼むよ。
蟹 よし、よし。
(蟹は再び柳のかげに入る。)
蛙 さあ、蟹の叔父さんが味方をしてくれるから大丈夫だ。もう少しここらで遊んでいようか。や、向うから誰か来るようだぞ。蛇やいたずらっ児とは違
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