いこつ》の影が映つて……。」
お由の声は顫《ふる》へてゐた。伯母も顔の色を変へた。
「え、骸骨の影が……。見違ひぢやあるまいね。」
「あんまり不思議ですから好く見つめてゐたんですけれど、確《たしか》にそれが骸骨に相違ないので、わたしはだん/\に怖くなりました。わたしばかりでなく、内の人の眼にもさう見えたといふのですから、嘘ぢやありません。」
「まあ。」と、伯母は溜息《ためいき》をついた。「当人はそれを知らないのかえ。」
「ひどく眠《ねむ》がつてゐて、又すぐに寐てしまひましたから、何にも知らないらしいのです。それにしても、骸骨《がいこつ》が映るなんて一体どうしたんでせう。」
「下谷へ行つて訊《き》いて見たの。」と、伯母《おば》は訊いた。
「内の人は今朝早くに下谷へ行つて、その話をしましたところが、行者様《ぎようじやさま》はたゞ黙つて考へてゐて、わたしにもよく判らないと云つたさうです。」と、お由は声を曇らせた。「ほんたうに判らないのか、判つてゐても云はないのか、どつちでせうね。」
「さあ。」
判つてゐても云はないのであらうと、伯母は想像した。お由もさう思つてゐるらしかつた。もしさうなら
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