影を踏まれた女――「近代異妖編」
岡本綺堂
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)今は流行《はや》らない。
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)両|袖《そで》をかき合せながら、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しよんぼり[#「しよんぼり」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)一度にばら/\と駈けよつて来て、
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
Y君は語る。
先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知つてゐる。それは影を踏まれたといふことである。
影を踏むといふ子供遊びは今は流行《はや》らない。今どきの子供はそんな詰らない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好さゝうなものであるが、これは秋の夜にかぎられてゐるやうであつた。秋の月があざやかに冴《さ》え渡つて、地に敷く夜露が白く光つてゐる宵々に、町の子供たちは往来に出て、こんな唄《うた》を歌ひはやしながら、地にうつる彼等の影を踏むのである。
――
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