。
すると火が急に消えて、そこらはにわかに青くしいんとなってしまったので火のそばのこどもらはわあと泣き出しました。
狼は、どうしたらいいか困ったというようにしばらくきょろきょろしていましたが、とうとうみんないちどに森のもっと奥の方へ逃《に》げて行きました。
そこでみんなは、子供らの手を引いて、森を出ようとしました。すると森の奥の方で狼どもが、
「悪く思わないで呉ろ。栗だのきのこだの、うんとご馳走《ちそう》したぞ。」と叫ぶのがきこえました。みんなはうちに帰ってから粟餅《あわもち》をこしらえてお礼に狼森へ置いて来ました。
春になりました。そして子供が十一人になりました。馬が二疋来ました。畠《はたけ》には、草や腐《くさ》った木の葉が、馬の肥《こえ》と一緒に入りましたので、粟や稗はまっさおに延びました。
そして実もよくとれたのです。秋の末のみんなのよろこびようといったらありませんでした。
ところが、ある霜柱《しもばしら》のたったつめたい朝でした。
みんなは、今年も野原を起して、畠をひろげていましたので、その朝も仕事に出ようとして農具をさがしますと、どこの家《うち》にも山刀《なた》
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