うけんめい》、北からの風を防いでやりました。それでも、小さなこどもらは寒がって、赤くはれた小さな手を、自分の咽喉《のど》にあてながら、「冷たい、冷たい。」と云ってよく泣きました。
 春になって、小屋が二つになりました。
 そして蕎麦《そば》と稗《ひえ》とが播《ま》かれたようでした。そばには白い花が咲き、稗は黒い穂を出しました。その年の秋、穀物がとにかくみのり、新らしい畑がふえ、小屋が三《み》つになったとき、みんなはあまり嬉《うれ》しくて大人までがはね歩きました。ところが、土の堅く凍《こお》った朝でした。九人のこどもらのなかの、小さな四人がどうしたのか夜の間に見えなくなっていたのです。
 みんなはまるで、気違《きちが》いのようになって、その辺をあちこちさがしましたが、こどもらの影《かげ》も見えませんでした。
 そこでみんなは、てんでにすきな方へ向いて、一緒《いっしょ》に叫びました。
「たれか童《わらし》ゃど知らないか。」
「しらない」と森は一斉にこたえました。
「そんだらさがしに行くぞお。」とみんなはまた叫びました。
「来お。」と森は一斉にこたえました。
 そこでみんなは色々の農具をもっ
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