あ。」
「ようし。」森は一ぺんにこたえました。
 みんなはまた声をそろえてたずねました。
「ここで火たいてもいいかあ。」
「いいぞお。」森は一ぺんにこたえました。
 みんなはまた叫びました。
「すこし木《きい》貰《もら》ってもいいかあ。」
「ようし。」森は一斉にこたえました。
 男たちはよろこんで手をたたき、さっきから顔色を変えて、しんとして居た女やこどもらは、にわかにはしゃぎだして、子供らはうれしまぎれに喧嘩《けんか》をしたり、女たちはその子をぽかぽか撲《なぐ》ったりしました。
 その日、晩方までには、もう萱《かや》をかぶせた小さな丸太の小屋が出来ていました。子供たちは、よろこんでそのまわりを飛んだりはねたりしました。次の日から、森はその人たちのきちがいのようになって、働らいているのを見ました。男はみんな鍬をピカリピカリさせて、野原の草を起しました。女たちは、まだ栗鼠《りす》や野鼠《のねずみ》に持って行かれない栗《くり》の実を集めたり、松を伐《き》って薪《たきぎ》をつくったりしました。そしてまもなく、いちめんの雪が来たのです。
 その人たちのために、森は冬のあいだ、一生懸命《いっしょ
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