本のすすきを引き抜《ぬ》いて、その根から土を掌《てのひら》にふるい落して、しばらく指でこねたり、ちょっと嘗《な》めてみたりしてから云いました。
「うん。地味《じみ》もひどくよくはないが、またひどく悪くもないな。」
「さあ、それではいよいよここときめるか。」
も一人が、なつかしそうにあたりを見まわしながら云いました。
「よし、そう決めよう。」いままでだまって立っていた、四人目の百姓が云いました。
四人はそこでよろこんで、せなかの荷物をどしんとおろして、それから来た方へ向いて、高く叫《さけ》びました。
「おおい、おおい。ここだぞ。早く来《こ》お。早く来お。」
すると向うのすすきの中から、荷物をたくさんしょって、顔をまっかにしておかみさんたちが三人出て来ました。見ると、五つ六《む》つより下の子供が九《く》人、わいわい云いながら走ってついて来るのでした。
そこで四人《よったり》の男たちは、てんでにすきな方へ向いて、声を揃《そろ》えて叫びました。
「ここへ畑起してもいいかあ。」
「いいぞお。」森が一斉《いっせい》にこたえました。
みんなは又《また》叫びました。
「ここに家建ててもいいか
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