は、黄金《きん》色の目をした、顔のまつかな山男が、あぐらをかいて座つてゐました。そしてみんなを見ると、大きな口をあけてバアと云ひました。
子供らは叫んで逃げ出さうとしましたが、大人はびくともしないで、声をそろへて云ひました。
「山男、これからいたづら止《や》めて呉《け》ろよ。くれぐれ頼むぞ、これからいたづら止めで呉ろよ。」
山男は、大へん恐縮したやうに、頭をかいて立つて居《を》りました。みんなはてんでに、自分の農具を取つて、森を出て行かうとしました。
すると森の中で、さっきの山男が、
「おらさも粟餅《あはもち》持つて来て呉《け》ろよ。」と叫んでくるりと向ふを向いて、手で頭をかくして、森のもつと奥の方へ走つて行きました。
みんなはあつはあつはと笑つて、うちへ帰りました。そして又粟餅をこしらえて、狼森《オイノもり》と笊森《ざるもり》に持つて行つて置いて来ました。
次の年の夏になりました。平らな処《ところ》はもうみんな畑です。うちには木小屋がついたり、大きな納屋が出来たりしました。
それから馬も三疋になりました。その秋のとりいれのみんなの悦《よろこ》びは、とても大へんなものでした
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