狼森と笊森、盗森
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)狼森《オイノもり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|疋《ひき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)けら[#「けら」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)どん/\
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 小岩井農場の北に、黒い松の森が四つあります。いちばん南が狼森《オイノもり》で、その次が笊森《ざるもり》、次は黒坂森、北のはづれは盗森《ぬすともり》です。
 この森がいつごろどうしてできたのか、どうしてこんな奇体な名前がついたのか、それをいちばんはじめから、すつかり知つてゐるものは、おれ一人だと黒坂森のまんなかの巨《おほ》きな巌《いは》が、ある日、威張つてこのおはなしをわたくしに聞かせました。
 ずうつと昔、岩手山が、何べんも噴火しました。その灰でそこらはすつかり埋《うづ》まりました。このまつ黒な巨きな巌も、やつぱり山からはね飛ばされて、今のところに落ちて来たのださうです。
 噴火がやつとしづまると、野原や丘には、穂のある草や穂のな
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