がしましたが、どうしても見附かりませんでした。それで仕方なく、めい/\すきな方へ向いて、いつしよにたかく叫びました。
「おらの道具知らないかあ。」
「知らないぞお。」と森は一ぺんにこたへました。
「さがしに行くぞお。」とみんなは叫びました。
「来お。」と森は一斉に答へました。
みんなは、こんどはなんにももたないで、ぞろ/\森の方へ行きました。はじめはまづ一番近い狼森《オイノもり》に行きました。
すると、すぐ狼が九《く》疋出て来て、みんなまじめな顔をして、手をせわしくふつて云ひました。
「無い、無い、決して無い、無い。外をさがして無かつたら、もう一ぺんおいで。」
みんなは、尤《もつと》もだと思つて、それから西の方の笊森《ざるもり》に行きました。そしてだん/\森の奥へ入つて行きますと、一本の古い柏《かしは》の木の下に、木の枝であんだ大きな笊が伏せてありました。
「こいつはどうもあやしいぞ。笊森の笊はもつともだが、中には何があるかわからない。一つあけて見よう。」と云ひながらそれをあけて見ますと、中には無くなつた農具が九つとも、ちやんとはひつてゐました。
それどころではなく、まんなかに
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