な工合でだんだんやって行ったんだねえ。そして鶴《つる》だの鷺《さぎ》だのは、結局染めなかったんだねえ。」
「いゝえ。鶴のはちゃんと注文で、自分の好みの注文で、しつぽのはじだけぽっちょり黒く染めて呉れと云ふのです。そしてその通り染めました。」
 梟はにやにや笑ひました。私は、さっきひとの云ったことを、うまく使ひやがったなとは思ひましたが、元来それは梟をよろこばせようと思って云ったことですから、私もだまってうなづきました。
「ところがとんびはだんだんいゝ気になりました。金もできたし気ぐらゐもひどく高くなって来て、おれこそ鳥の仲間では第一等の功労者といふやうな顔をして、なかなか仕事もしなくなりました。尤《もっと》も自分は青と黄いろで、とても立派な縞《しま》に染めて大威張りでした。
 それでもいやいや日に二つ三つはやってましたが、そのやり方もごく大ざっぱになって来て、茶いろと白と黒とで、細《こまか》いぶちぶちにして呉れと頼んでも、黒は抜いてしまったり、赤と黒とで縞にして呉れと頼んでも、燕《つばめ》のやうにごく雑作なく染めてしまったり、実際なまけ出したのでした。尤もそのときは残ったものもわづかで
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