林の底
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)いち様《やう》に

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)畜生|遁《に》げた
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「わたしらの先祖やなんか、
 鳥がはじめて、天から降って来たときは、
 どいつもこいつも、みないち様《やう》に白でした。」
「黄金《きん》の鎌《かま》」が西のそらにかゝつて、風もないしづかな晩に、一ぴきのとしよりの梟《ふくろふ》が、林の中の低い松の枝から、斯《か》う私に話しかけました。
 ところが私は梟などを、あんまり信用しませんでした。ちょっと見ると梟は、いつでも頬《ほほ》をふくらせて、滅多《めった》にしゃべらず、たまたま云《い》へば声もどっしりしてますし、眼《め》も話す間ははっきり大きく開いてゐます、又木の陰の青ぐろいとこなどで、尤《もっと》もらしく肥《ふと》った首をまげたりなんかするとこは、いかにもこゝろもまっすぐらしく、誰《たれ》も一ペんは欺《だま》されさうです。私はけれども仲々信用しませんでした。しかし又そんな用のない晩に、銀いろの月光を吸ひながら、そんな大きな梟が、どんなことを云ひ出すか、事に
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