よるといまの話のもやうでは名高いとんびの染屋のことを私に聞かせようとしてゐるらしいのでした、そんなはなしをよく辻棲《つじつま》のあふやうに、ぼろを出さないやうに云へるかどうか、ゆっくり聴いてみることも、決して悪くはないと思ひましたから、私はなるべくまじめな顔で云ひました。
「ふん。鳥が天から降ってきたのかい。
そのときはみんな、足をちゞめて降って来たらうね。そしてみないちやうに白かったのかい。どうしてそんならいまのやうに、三毛だの赤だの煤《すす》けたのだの、斯ういろいろになったんだい。」
梟ははじめ私が返事をしだしたとき、こいつはうまく思ふ壺《つぼ》にはまったぞといふやうに、眼をすばやくぱちっとしましたが、私が三毛と云ひましたら、俄《には》かに機嫌《きげん》を悪くしました。
「そいつは無理でさ。三毛といふのは猫《ねこ》の方です。鳥に三毛なんてありません。」
私もすっかり向ふが思ふ壺にはまったとよろこびました。
「そんなら鳥の中には猫が居なかったかね。」
すると梟が、少しきまり悪さうにもぢもぢしました。この時だと私は思ったのです。
「どうも私は鳥の中に、猫がはひってゐるやうに聴い
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