たよ。たしか夜鷹《よだか》もさう云ったし、烏《からす》も云ってゐたやうだよ。」
 梟はにが笑ひをしてごまかさうとしました。
「仲々ご交際が広うごわすな。」
 私はごまかさせませんでした。
「とにかくほんたうにさうだらうかね。それとも君の友達の、夜鷹がうそを云ったらうか。」
 梟は、しばらくもぢもぢしてゐましたが、やっと一言、
「そいつはあだ名でさ。」とぶっ切ら棒に云って横を向きました。
「おや、あだ名かい。誰の、誰の、え、おい。猫ってのは誰のあだ名だい。」
 梟《ふくろふ》はもう足を一寸《ちょっと》枝からはづして、あげてお月さまにすかして見たり、大へんこまったやうでしたが、おしまひ仕方なしにあらん限り変な顔をしながら、
「わたしのでさ。」と白状しました。
「さうか、君のあだ名か。君のあだ名を猫《ねこ》といったのかい。ちっとも猫に似てないやな。」
 なあにまるっきり猫そっくりなんだと思ひながら、私はつくづく梟の顔を見ました。
 梟はいかにもまぶしさうに、眼をぱちぱちして横を向いて居《を》りましたが、たうとう泣き出しさうになりました。私もすっかりあわてました。下手《へた》にからかって、梟に
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