めです。」
こゝだと私は思ひました。
「さうするとどうしてあんなにめじろも頬白も、きちんと両方おんなじ形で、おんなじ場所に白いかたが残ってゐるだらうね。あんまり工合《ぐあひ》がよすぎるよ。息がつゞかないでやめたもんなら、片っ方は眼のまはり、あとはひたひの上とかいふ工合に行きさうなもんだねえ。」
梟はしばらく眼をつむりました。月光は鉛のやうに重くまた青かったのです。それからやっと眼をあいて、少し声を低くして云ひました。
「多分両方べつべつに染めましたでせう。」
私は笑ひました。
「両方別々なら尚更《なほさら》をかしいぢゃないかねえ。」
梟はもうけろっと澄まして答へました。
「をかしいことはありません。肺の大さははじめもあとも同じですから、丁度同じころに息が切れるのです。」
「ふん、さうだらう。」私は理くつは尤《もっと》もだ、うまく畜生|遁《に》げたなと心のうちで思ひました。
「こんな工合で。」梟は云ひかけてぴたっとやめました。どうも私にいまやられたのが、しゃくにさはってあともう言ひたくないやうでした。すると今度は又私が、梟にすまないやうな気になりました。そこで言ひました。
「そん
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