んといふ、いつまでたっても誰《たれ》にも見まちがはれるてあひなどは、きゃっきゃっ叫んだり、手をつないだりしてはねまはり、さっそくとんびの染屋へ出掛けて行きました。」
私も全くこいつは面白いと思ひました。
「いや、さうですか。なるほど。さうかねえ。鳥はみんな染めて貰《もら》ひに行ったかねえ。」
「えゝ、行きましたとも。鷲《わし》や駝鳥《だてう》など大きな方も、みんなのしのし出掛けました。
『わしはね、ごくあっさりとやって貰ひたいぢゃ。』とか、
『とにかくね、あんまり悪どい色でなく、まあせいぜい鼠《ねずみ》いろぐらゐで、ごく手ぎはよくやって呉《く》れ』とかいろいろ注文がちがって居ました。鳶ははじめは自分も油が乗ってましたから、頼まれたのはもう片っぱしから、どんどんどんどん染めました。
川岸の赤土の崖《がけ》の下の粘土を、五とこ円くほりまして、その中に染料をとかし込み、たのまれた鳥をしっかりくはへて、大股《おほまた》に足をひらき、その中にとっぷりと漬けるのでした。どうもいちばん染めにくく、また見てゐてもつらさうなのは、頭と顔を染めることでした。頭はどうにか逆《さかさ》まにして染めるのでし
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